
花綵の根っこ
幼いの頃から、私は“普通のスピード”が苦手でした。
幼稚園のバス停まで5分の道を、30分かけて歩き、道ばたの草を摘んで、潰して、髪にさして…
誰も急がせなければ、私はいつまででもそこにいるような子どもでした。
いま思えば、あのときからすでに、自然のリズムに体を預けていたのかもしれない。
それが、私の「普通」でした。
大人になって、花のアトリエで働きました。結婚式の装花、料亭の生け込みなど、華やかな世界のなかで、私はふと立ち止まっていました。
虫喰いの葉はすぐ捨てられ、少しでも傷んだ花は価値がないと言われる。
いのちある花のそんな扱いに、少しずつ違和感を感じるようになりました。
そんなとき、ある教室で出会ったのが、露地で育った草花たちでした。
農薬を使わず、自然のままに咲く花々。
虫に喰われた葉はレースのように美しく、枯れかけた花にも静かな風情がありました。
「これが素敵だよね」
そう言って笑う人がいて、心の奥がふっとゆるみ、しだいに私は思うようになりました。
花は、飾りものでも演出でもなくて、私たちとともに生きる存在なのだと。
朝、庭を眺める。ふくらむ蕾、色づいた葉、陽の光をもとめて曲がりくねった茎さえ、いとおしい。
花を活けるというより、そこにある風景をそのまま連れてくるような感覚。
枝の癖も、虫の跡も、そのままに。
そうして、「花綵」が生まれました。

花綵が育てたい未来
私が目指すのは、「やさしさが日常になる」未来。
・花をいける時間を通して、自分と向き合う。
・無理なく、急がず、自然とともに暮らす。
・違いをそのまま受けとめあえる。
そんな感覚が、あたりまえになる社会の土壌を、草木花とともに耕していきたい。
花綵のこれから
私は、まずは身近なところから始めます。
教室で草木花と向き合いながら、手を動かす時間。
「ただ花をいける」だけで、心がふっとほどけるときがある。そんな瞬間を少しずつ、もっと多くの人に届けたい。
そして、花との暮らしを楽しむ人たちと、ゆるやかにつながりたい。
花を飾るというより、「花と一緒にいる」日々の心地よさ。
その感覚を、大切にできる仲間とともに。
フラワースタイリスト 野沢ちか